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2017年9月15日金曜日

麻雀プロだって「投了」したい その3 棄権休場制度について考えてみる

以前に書いたが、
「麻雀は投了ができない」
これは本当に辛い点である。

そしてこれがさらに顕著になるのは「リーグ戦」である。

今期の通年リーグの結果だけを見てもわかるが、
10節の戦いともなると最終節が始まる時点でもはや降級が確定している人は否応無しにも出てきてしまう。
これは仕方が無い話だ。
今期の当団体の通年リーグ最終結果だけ見てもその事実は明白である。

https://twitter.com/ClubNPM/status/906822090765955073
https://twitter.com/ClubNPM/status/906449275793444864
https://twitter.com/ClubNPM/status/906438031665541120


無論、物理的に考えればどんなにマイナスをしている人でも勝つ可能性は0ではない。
たとえば100万点のトップを取れば大きなマイナスを抱えている人でも一気に昇級する事はありえる、
そして麻雀の性質上、これが起きる可能性は0%ではない。

ただそんな事象は多分人が100回生まれ変わって1回巡り合う事も無いくらいの可能性だ。
事実上はもう決着がついている。

「リーグ戦で棄権休場の制度を作るべき」
この意見はちょくちょく聞く。

大きなマイナスを負って事実上もはや勝機が無い選手、
もはや卓につく事に意味が無い、
でも自分の一打が勝敗に影響を与えてしまう、こういった立場は本当にきつい。

これを回避する為の休場を認めて欲しい、という訴えは別に不自然ではない。
さらに言えば地方から通う選手にとっては交通費も結構切実な問題だろう。

一度東京にでるだけで相応のお金がかかり仕事も休む事になる、
それがもはや敗戦処理にしかならない戦いの為だとしたら、これほどつらい物はない。

ただ棄権制度を認めた場合の大きなデメリットとして、
「上位の選手が割を食うケースが多くなる」という点がある。

大きな負債を抱えた選手が後半に「今更のトップ」を取ること、
これは上位の選手にとっては、歓迎する事態だ。

自分と100P離れた選手がトップを取って自分に迫るよりも、
自分と500P離れたもはや選手がトップを取って一半荘を消化してくれる方が事の方がどう考えても望ましい。

「棄権」が制度として認められてこういった選手が後半にいなくなると、
どうやってもそこまで優位性を築いてきた選手達にマイナスとして働くケースは増える。

個人的にはやはりそういう意味で「公平な勝負を作る為」と考えて、各人には責任を持って出場をして欲しいと思うが、
「でもこれは東京に在住しているから言える台詞なのかも」とか思ったりもする。


過去に一度B2リーグにおいて、
大きなマイナスを喫した選手が次々と休場し、
結果として「降級人数0人」というケースが生まれた事があった。

大半が地方在住の選手だった為、気持ちは理解できたが、
この珍事はさすがに今のところはこの期しか見たことが無い。

そして一部選手達、特に昇級ボーダーの選手達からは不満の声が聞こえてきた。
実際に最終節は結構なカオスだった。
そりゃ降級する人がいないのだからそうなるだろう。

見方をちょっと変えてみよう。

将棋プロの順位戦なんかは、
「物理的にもう勝ち目なし」って事態が良く起こる。
なんせ勝ち負けの数で勝負が決まっているのだから、
最終戦が始まる前に既に昇級・残留・降級が確定の人が数多くいる。
そんな人でもちゃんと出場している理由をさがすなら

①対局料
②たとえ降級であっても今年の順位が翌年にもたらす影響が大きい
③選手としての自覚
ってトコだろう。多分。

麻雀界ではこれをマネできない事情が多すぎる(特に①②)
さらに言えば既述の通り、
麻雀が4人の戦いである為に、非現実的目標しかない人の一打が現実的目標のある人を阻害してしまうケースが多い、という精神的に厳しい点もある。



今年はB2にて佐月麻理子が史上初の「4月にて残留確定」という立場にたたされた後に大きなマイナスを追った。
この立場を見せつけられて改めて、「棄権休場の可否」ってのがちょっと話題に上がった。

長野からかよっていたAリーグの田幸さん、
関西から通っていたB2の可南さん、

色々と考える点が多い中、
それでもちゃんと戦いきったのは高い選手としての責任感のあらわれだと思うし、素直に敬意を払った。
特に数年前のB2の立て続け休場を良く覚えているだけに。

そういった姿を見ると、
食えない業界である競技麻雀、
多くの選手の意地と自覚で成り立っているんだなあ、と思う反面、
より多くの人が競技をしやすい環境作るうえで、棄権休場はちょっと考えるべき制度かなあ、
とか思う次第である。







ただ、

改めてこの日記書きながら考えた結果、

それでも僕はやっぱりもしも「棄権休場を制度化すべきか?」という決議が協会で出たら、
多分、反対票を入れてしまうと思う。

凄い悩ましいけど、
自分が選手として不利をこうむる可能性と、
選手としての立場を放棄する権利を使える可能性、


どっちをケアするかといったら前者をケアしたいかな。
皆お金じゃなくて色々な矜持で参加している競技麻雀、
問題も一杯あるけれど、それでもやはり「競技の公平性」って部分はぶらしたくない。

そう思うのでありました。