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2017年9月19日火曜日

麻雀漫画について書いてみる⑨ むこうぶち 高レート裏麻雀列伝

今日紹介するのは「 むこうぶち 高レート裏麻雀列伝」
2017年9月現在、この漫画は46巻まで刊行されている。
これはおそらく近代麻雀史上最長の長編連載だろう。
連載年数はアカギの方が上だが、こっちは月2回ほぼ休まずの連載をしてきた結果である。
いやこれは凄いことだ。






物語構成として、
いわゆる「麻雀劇画」が一般的には「麻雀で勝った者の勝者のストーリー」であるのに対し、
本作品は主人公である「傀(カイ)」と麻雀して負けた者を描いた「敗者のストーリー」である点が画期的な作品である。
その意味で真の主人公は各回に出てくる「敗れていく者たち(あるいは彼の闘牌の観戦者など戦いを見届ける者)」であると言えるだろう。


そこで繰り広げられる様々な死闘と人間模様、
死にゆく者
生き残る者
全てを失った後で新しい希望を見つける者
そういった背景と人間ドラマ、
そこにたどり着くまでの心理的葛藤が魅力的な作品である。

ただし25巻くらいまでは。

※ここからは、このブログの漫画レビュー史上最初の「低評価レビュー」となるのでご承知おきを。



上述の通りこの作品、
連載当初は傀によって倒される人々の様々な背景が書かれ、
水原・ノガミの秀・日陰・江崎のように倒された後に再挑戦してくる人達が出てきたりとしたあたりまでは面白かった。

が、
いい加減にそういった人間模様を書くのに限界が出てきたのか、
新しいキャラクターを書くのに限界が出てきたのか、
20巻過ぎたあたりから人間ドラマを書く作風からの方向転換をはかったあたりで、
急激なまでに作品のパワーが落ちた感が否めない物となっている。

元々この作品は、片山作品ほどの骨太な牌姿構成で成り立っている作品ではなかった。
そこで途中から水原とか日陰を使ってキャラクターで魅せる作風を目指すも、押川作品のようなパワーは出ず。
さらに途中から色々なルールとそこにあわせた戦術アイディアで魅せる作風を目指すも、
福本作品のような面白さは出ず、

僕としては、
「一体いつまで連載してるんだろう」
「いまだにそんなに人気あるんだろうか・・」
という状態になってしまった感が否めない作品である。

というわけで改めて。
25巻くらいまではお勧めです。
水原とか江崎のリベンジ戦あたりまでは本当に面白い。
でもそこから先は正直に見る価値はあまり無い作品だと思います。

上述の通りちょっと酷評寄りのレビューとなりましたが、
初期の面白さをしってる僕としては、
天獅子悦也先生にはむしろこれを続けるより新作を書いて欲しい。

と思っているのでありました。